食品衛生お役立ち情報

アニサキス症と予防対策




ここ平成22年以来、アニサキス寄生虫による食中毒が増加しています。このことについて、考えて見ましょう。



アニサキス幼虫とは

成虫はクジラ、イルカなどの胃に寄生しています。幼虫はアニサキスの生活史により、ほとんどの海産魚介類に常在するような状態で寄生しています。内臓表面に多く寄生していますが、腹腔や一部筋肉にも寄生しており渦巻状又は動いています。
体長は2~3㎝位、細く白い虫で木綿糸のようであり肉眼で見ることができます。一尾当たりの寄生数は魚種、魚体、生息海域などにより差があります。



症状

海産魚介類を生食又は生に近い状態で人が食べると、アニサキス幼虫が胃壁や小腸壁に頭部を突き刺したり、もぐり込んだりすることがあります。
胃壁に入ると4~5時間位で激しい腹痛(上腹部痛)、おう吐、吐気を起こします(胃アニサキス症と言う)。
腸に下り腸壁に入ると10時間位~数日後に腸閉塞を起こすこともあります(腸アニサキス症と言う)。

一般的な食中毒と異なり下痢は起こしません。



アニサキス幼虫が多く寄生している魚介類

寄生している魚介類は非常に多いです。特にサバ、タラ(マダラ、スケソウダラ)、ニシン、サケ、メジマグロなどは、内臓、腹腔に高率で多数寄生がみられます。サケ(特に天然の鮮秋サケ)、スルメイカ、サバなどは筋肉部にも寄生がみられます。





原因食品

近年、全国で発生したアニサキス症の原因食品は、シメサバ、炙りシメサバ、サンマ・サバ・カツオ・アジ・ひらめ・イワシ・キンメダイ・イナダ・アコウダイ・イシダイ・サワラの刺身、刺身盛り合わせ(魚種不明)、スルメイカ・アオリイカの刺身、サンマ寿司、サバの棒寿し、にぎり寿司、ブリの刺身醤油漬けなどとなっています。



近年、アニサキス幼虫による食中毒が増加

わが国では、これまで一年間に少なくとも2000~3000名のアニサキス症の患者が発生しているとの報告が出ています。
平成21年頃までは保健所等に届けられる件数は少なく、氷山の一角の届出ではないかと考えられていました。
また、保健所は患者から届けられた際、食中毒扱いではなく有症苦情として処理していました。ところが1999年に食品衛生法施行規則が改正され、食品に由来する寄生虫も食中毒の病因物質に加えられ寄生虫症を食中毒として扱うようになりました。
このような経緯により、近年、消費者や医者等のアニサキス症に対する知識や意識が高まったことが、保健所に届けられるアニサキス幼虫による食中毒が全国的に増加している主要因ではないかと思われます。

東京都のアニサキスによる食中毒発生件数をみてみると、平成21年まで年間1件程度であったものが、平成22年~25年にかけて6~22件(患者数7~24名)と急増しています。



保健所の対応

アニサキス症が届けられた場合、保健所は患者の喫食調査、症状調査等を行い、医師から「アニサキス幼虫による食中毒」の診断名が出れば食中毒として扱われます。
魚介類を提供した施設(飲食店、魚屋等)は、自治体により異なりますが、2~3日程度の営業停止処分を受けることになるので営業者は予防対策の徹底が必要となります。



予防対策

対策1
アニサキス幼虫は熱に弱く、加熱することで死滅させることができます。
(70℃では瞬間的に、60℃では1分間程度で死滅します。)

対策2
-20℃以下、24時間以上の冷凍で死滅します。
(家庭の冷凍冷蔵庫等では保管量が多すぎる等により-20℃以下に下がらずアニサキス幼虫が死滅しない場合があるので注意が必要です。)

対策3
筋肉部に寄生している可能性が高い鮮魚は生食をひかえる。
サバ、天然サケ(特に秋サケ)、タラ、ニシンなど。

対策4
身卸しする際の二次汚染対策
わが国の食習慣から生鮮魚介類の生食をひかえることは、困難な状況にあります。
筋肉部に寄生の少ない魚種(アジ、イワシ、サンマ、カツオ等)の生食については、調査の結果、内臓表面、腹腔にいるアニサキス幼虫が身卸し時、サシミに移動又は手指及び器具類(まな板、包丁等)を介して二次汚染し発症することが多いものと示唆されています。
従って、以下の対策を徹底することでアニサキス症を減少させることが可能と思われます。

①魚を購入後、低温保管(できれば4℃以下)を徹底する。
[理由]温度変化によるアニサキス幼虫の運動性について調査したところ6℃以下の水温では渦巻状を呈して動かなくなる。このため低温保管をすると内臓から筋肉部への侵入の可能性が低くなる。

②身卸し時、内臓は手でえぐり取り直接ゴミ容器に入れる。
[理由]ぬれているまな板の上に内臓を置くとアニサキス幼虫は短時間で移動し、サシミ等に付着する可能性がある。

③魚の腹腔及び体表の水洗いを手で十分に行う。
[理由]アニサキス幼虫は内臓に寄生が多いが、身卸し後の腹腔表面にも寄生が見られる。

④まな板、包丁、フキン等の器具類は、身卸し用とサシミ用に使用区分を徹底する。
[理由]内臓にいるアニサキス幼虫が身卸しやサシミ調製時、器具類を介してサシミに二次汚染されるのを防ぐ。

⑤身卸しやサシミ調製の際は、まな板等の器具類や手指の洗浄を徹底するとともに、まな板は洗浄後、ペーパー等で水分を取り除く。
[理由]まな板にいるアニサキス幼虫は水洗いで除去できる。水がたまっているなど濡れているまな板の上で移動するのを防ぐ。乾いたまな板の上では渦巻くので、見つけにくく手指に付着して二次汚染する可能性がある。

⑥三枚卸しやサシミを調製する際は、迅速に作業を行い長時間まな板の上に放置しない。
[理由]ぬれているまな板の上にいるアニサキス幼虫は短時間で移動し、サクやサシミに付着する可能性がある。

⑦スルメイカは筋肉部にアニサキス幼虫が寄生していることがあるので内臓を取り出した後、目視チェックを徹底する。
[理由]腹側の筋肉部に渦巻いて寄生(1~数匹)している。寄生部位は筋肉の白色より点状に少し濁っており、見つけにくいが慣れると容易に除去できる。

⑧サシミ調製中やラップ包装する際は、目視チェックを徹底する。(できれば複数)


<食品衛生コンサルタント(元東京都食品衛生監視員):丸山 文一>