臨床疾患分類

内分泌、栄養及び代謝障害

1型糖尿病と2型糖尿病




はじめに

脾臓のβ細胞から分泌されるインスリンは、下記のように、肝臓細胞、筋肉細胞、脂肪細胞が行う代謝(※)に作用する。

※代謝
異化と同化を合わせて代謝と呼ぶ。異化は生体に必要なグリコーゲン、タンパク質、脂質を合成すること。同化は糖、タンパク質、脂質を分解してエネルギーを得ること。


  

<インスリンが作用した肝臓細胞>
糖の取り込み(グリコーゲンの合成)↑
糖の放出↓

<インスリンが作用した筋肉細胞>
糖の取り込み↑
アミノ酸の取り込みによる、タンパク質の合成↑
タンパク質の分解↓

<インスリンが作用した脂肪細胞>
脂肪の合成↑
脂肪の分解↓


インスリンの作用不足の状態では、他のホルモン群(※)の作用により正反対の代謝が促進され、異化と同化のバランスが崩れる。

※他のホルモン群
血糖値を下げるホルモンはインスリンしかないが、血糖値を上げるホルモンはアドレナリン、グルカゴン、ステロイド、成長ホルモンなど数種類ある。飢餓の中で人間の体は進化したためと考えられる。


  

<インスリン作用不足時の肝臓細胞>
糖の取り込み(グリコーゲンの合成)↓
糖の放出↑

<インスリン作用不足時の筋肉細胞>
糖の取り込み↓
アミノ酸取り込みによる、タンパク質の合成↓
タンパク質の分解↑

<インスリン作用不足時の脂肪細胞>
脂肪の合成↓
脂肪の分解↑


ちなみにタンパク質、脂肪は分解されると糖になり、血中へ放出される。
糖尿病は、下記の①②③によるインスリン作用不足により、糖、タンパク質、脂質の代謝異常が起こった結果生じる、特徴的な疾患群である。

  

①脾臓のβ細胞が破壊されることによる絶対的インスリン欠乏
②インスリン分泌低下
③インスリンに対する感受性の低下(インスリン抵抗性)

上記の①に起因する場合は1型糖尿病、②と③の両方に起因する場合は2型糖尿病と呼ばれる。




1型糖尿病とは

子供のうちに遺伝的素因により発症することが多い。ウィルス感染が誘因となり、自己抗体ができ、脾臓のβ細胞が破壊される。治療のため、インスリン注射に依存する。




2型糖尿病とは

日本の糖尿病患者の95%が、この2型糖尿病である。中年期以降に多く発症する。

  

<2型糖尿病の発症原因>
遺伝的素因
内臓肥満(メタボリックシンドローム)
糖質の過剰摂取
脂質の過剰摂取
運動不足
加齢
ストレス

インスリン分泌低下とインスリン抵抗性の両方が発症にかかわる。

インスリン抵抗性は、標的細胞の細胞膜にあるインスリン受容体の減少と受容体以後の機能障害によって起こる。




症状

自覚症状がなく、発症時期が正確にはわからないことが多い。血統が300mg/dLを超えると、高血糖症状である、口渇、多飲、多尿、脱水胃による体重減少が現れる。




糖尿病の急性合併症とは

ケトアドソーシス ( ketoacidosis )
1型糖尿病患者が、インスリン投与を中断した際に起こる。ケトン体産生により、体内が酸性方向に急激に進む状態になる。重度の場合、昏睡に陥る。


  

<糖尿病性ケトアシドーシスのしくみ>
インスリンの絶対不足になる。

糖の代わりに脂肪がエネルギー減として分解される。

脂肪分解産物である酸性のケトン体が多量に生じる。

体内が酸性の方向に急激に進む。

昏睡状態になる。




糖尿病の慢性合併症とは

糖尿病により血糖値が高くなると、血中のブドウ糖はさまざまなタンパク質と結合し、血流障害を起こす。

糖尿病による慢性合併症において、腎症、網膜症、抹消神経障害は糖尿病3大合併症と呼ばれている。以下に、主な慢性合併症を列挙する。


  

<小血管症>
神経障害(感覚障害、自律神経変調)

感覚障害では、足の神経の感覚が鈍麻し、餅を踏んだような感じの足底感覚になる。自立神経変調では、便秘、発汗異常、立ちくらみ、排尿障害がある。

網膜症
高血糖により網膜微笑血管が詰まり、無血管野が現れる(単純網膜症)。不足する酸素需要を満たすため新生血管が増殖する(増殖網膜症)。新生血管は破綻しやすいため、その後、緑内障へと進展する。最悪の場合、失明する。

腎症
初期では尿中微量アルブミンが陽性になる。その後、ネフローゼ症候群(※)になることが多い。最悪の場合、腎不全に進展し、人工透析を必要とする。

※ネフローゼ症候群
高度なタンパク尿と低タンパク血症を起こす腎障害の総称。


<大血管症>
心筋梗塞

冠動脈の粥状(じゅくじょう)動脈硬化症※により、心筋梗塞を起こす。糖尿病患者の場合、無痛性心筋梗塞が多い。

※粥状(じゅくじょう)動脈硬化症(アテローム硬化症)
【動脈内膜にコレステロールが沈着し、石灰化することによって硬化する。その後、動脈内腔は閉塞する。】

脳梗塞
脳動脈の粥状(じゅくじょう)動脈硬化症により、脳梗塞を起こす。


<足部疾患>
壊疽(えそ)

足の知覚鈍麻、足の血流障害、高血糖による易感染性が重なり、小さな傷から壊疽へ進行する。


<歯科疾患>
歯周病

糖尿病患者では歯周病が重症化し、歯を失いやすい。歯を失うことで、食事療法に支障をきたす。




食事療法

  

適正なエネルギー摂取量の設定
年齢、体重、性別、身体活動を考慮し、適正な摂取エネルギー量を設定する。

適正な栄養バランスの計算法
適正な栄養バランスは
●炭水化物 (1g = 4kcal ) 60%
●脂質 (1g = 4kcal ) 25%
●タンパク質 (1g = 9kcal ) 15%
である。


<一日のエネルギー摂取量が 2000kcal の場合>
炭水化物:
2000kcal × 0.6 = 1200kcal
1200kcal ÷ 4 = 300g

脂質:
2000kcal × 0.25 = 500kcal
500kcal ÷ 9 = 56g

タンパク質:
2000kcal × 0.15 = 300kcal
300kcal ÷ 4 = 76g

よって、炭水化物 300g 、脂質 56g 、タンパク質 76g が目安となる一日の摂取量となる。




運動療法

運動療法の基本は「歩くこと」である。一回30分のウォーキングを毎日行うことが望ましい。

ウォーキングにより、以下のことが期待できる。

  

●血中の糖分と脂質の分解促進
●インスリン感受性の改善

しかし、足の知覚鈍麻の症状が現れている場合、ウォーキングは足部疾患の契機になるため、控えた方が良い。




経口血糖降下薬による療法

経口血糖降下薬は、2型糖尿病患者で、食事療法と運動療法を3か月程度行っても効果がない場合に適応になる。


  

αグルコシターゼ阻害薬(対象:食後血糖高値患者)
αグルコシターゼ阻害薬は、小腸においてαグルコシターゼの活性を阻害することで、小腸の糖吸収を遅延させる。それゆえ、食後血糖高値患者は、毎食直前に服用することで、食後の血糖上昇を抑えることができる。

服用時に低血糖(血糖が70mg/dl以下)になった場合に備え、ブドウ糖を常に携帯する必要がある。


速効型インスリン分泌促進薬(対象:食後血糖高値患者)
速効型インスリン分泌促進薬は、遅延しているインスリン初期分泌を促進する。それゆえ、食後血糖高値患者は、毎食直前に服用することで、インスリンの分泌タイミングのずれを改善することができる。

食前30分では低血糖になる危険性がある。それゆえ、食前10分以内に服用する。


DPP-4阻害薬(対象:食後血糖高値患者)
食後の腸管刺激により、腸管よりインスリン分泌刺激ホルモン(インクレチン)が放出され。脾臓のβ細胞にインスリンを分泌するようフィードバックする。DPP-4阻害薬は、インスリン分泌刺激ホルモン(インクレチン)を分解するDPP-4を阻害することにより、インスリン分泌を促進する。


スルホニル尿素薬(SU剤)(対象:インスリン分泌低下患者)
脾臓のβ細胞に作用し、長時間にわたって、インスリン分泌促進作用を持つ。しかし、長期間投与により脾臓細胞が疲弊し、薬の効果がなくなる。


ビグアナイド薬
肝臓は空腹時、グリコーゲンの分解と糖新生の両方を行い、糖放出を行う。ビグアナイド薬は糖新生を抑制することで、肝臓からの糖放出を阻害する。しかし、糖の吸収を阻害する作用も持つ。

チアゾリジン薬(対象:インスリン抵抗性を持つ患者)
肝臓細胞、筋肉細胞、脂肪細胞のインスリン抵抗性を改善する。血中の中性脂肪を少なくし、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やすため、動脈硬化の予防に効果がある。




インスリン注射による療法

インスリン依存状態の1型糖尿病患者は、インスリン療法が絶対的に適応される。

インスリンが枯渇していない2型糖尿病患者でも、経口血糖降下薬では血糖時コントロールがうまくいかない場合、インスリン療法が相対的に適応される。


  

インスリン療法の注意点
○食前にインスリン注射を行ったら、必ず食事を摂ること。
(インスリン注射後に食事を摂らなければ、低血糖に陥る危険性があるため)

○インスリン依存状態の1型糖尿病患者はインスリン注射を絶対に中止してはいけない。
(インスリン注射を中止すれば、ケトアドソーシスにより、昏睡状態に陥るため。)

○低血糖の症状と対処法を理解する。
(患者自身で低血糖の事態に対処できるようにするため。)

○注射部位は、変更していく必要がある。
(同一部位に繰り返し注射すると、硬結ができて吸収しにくくなるため。)