食品衛生お役立ち情報

「大量調理施設衛生管理マニュアル」の解説




はじめに

現 状
「大量調理施設衛生管理マニュア」ルは、食品衛生を指導啓発する保健所等及び官民の調理施設(大小施設にかかわらず)において、衛生管理の方法論として「教本」又は「バイブル」的存在となっている。

特に調理に従事する者にあっては、本マニュアルに示したこれら内容を理解し、衛生管理の技術・知識として、調理現場で活かすことが、強く求められている。


本マニュアル作成の経緯
①初版(平成9年3月24日)
本マニュアルは、当時、食中毒事件の大規模化の傾向及び腸管出血性大腸菌O157による食中毒事件の続発などに対応し、平成9年に元厚生省が、食品衛生調査会の意見具申を踏まえ、大規模食中毒の発生を未然に防止するため、HACCPの衛生管理の方法を取り入れた内容で、作成されたものである。

②最終改正(平成25年10月22日)
平成18,19年シーズンにおいて、ノロウイルスによる食中毒及び感染症の大幅に増加したことを踏まえ、ノロウイルス食中毒対策を加え織り込んだ内容に、本マニュアルは改正された。


法的位置
本マニュアルの法的位置は、法体系である【「法律」→「政令」→「省令」→「通知」】の流れの中の、通知文の位置にあるが、各種衛生規範と同等で、準法令的位置にあるといえる。



I. 趣旨

HACCPの概念に基づく、調理過程における重要管理事項

以下4点が重要な衛生管理事項である。

①原材料の受け入れ・下処理段階における「管理を徹底する」こと。
②加熱調理食品については、中心部まで十分加熱し、「食中毒菌等(ウイルスを含む)を死滅させる」こと。
③加熱調理後の食品及び非加熱調理食品の「二次汚染防止を徹底する」すること。
④食中毒菌が付着した場合に菌の増殖を防ぐため、原材料及び調理後の食品の「温度管理を徹底する」こと。






II. 最重要事項

原材料の受け入れ・下処理段階における管理

(1)原材料は、品名、仕入元、生産者(製造者)の名称、製造年月日表示、ロット番号、並びに仕入れ年月日を記録し、1年間保存する。


(2)原材料は、納入業者から微生物又は化学検査の結果を提出させる。検査結果は1年間保存する。不適場合は、変更等措置をこうずる。


(3)原材料の納入に際しては、調理従事者等が必ず立ち合い、検収場で、品質、鮮度、品温(納入業者が運搬の際に、適切な温度管理を行っていたか)、異物混入等について点検、結果を1年間保存する。

  

解説:
当マニュアルの(別添1)原材料、製品等の保存温度が示されている。検収時に、その温度を参考に、納品された食材の保管温度をチェックしてください。特に凍結食品は一度解凍した跡がないかをチェックしてください。再凍結禁止である。



(4)検収時に食品を専用容器に移し替える。この場合、専用の蓋つき容器に入れ替え、原材料の包材(段ボール等)を保管冷蔵庫や厨房等に持ち込まない。

  

解説:
食品納入業者の搬入する容器や段ボールには、細菌、泥、虫、金具など異物が付いている。収穫、製造、流通過程では、床や地面に直置きされるなど、不衛生に取り扱われている従って、専用の蓋付容器に移し替える必要がある。



(5)食肉類、魚介類、野菜類等の生鮮食品は、1回に使い切る量を調理当日に仕入れるようにする。


(6)野菜・果物など必用に応じて殺菌する。

  

解説:
本マニュアルの中の(別添2)標準作業書には「野菜・果物」の洗浄と殺菌の方法が示されている。野菜・果物の殺菌濃度と時間を参考にしてください。ただし、その作業手順の中に「流水で3回以上水洗いする」ことを示しているが、疑問に思われる。このことについては、後に意見を述べる。





加熱調理食品の加熱温度管理

(1)中心部温度計を用いる。一般食材は中心部が75℃1分間以上。


(2)ノロウイルス汚染の恐れのある食品の場合は、85~90℃で90秒間(1分30秒)以上、又は同等以上加熱する。


(3)上記(1)、(2)の加熱温度と時間を記録する。その方法は、以下示した【加熱調理食品の中心温度及び加熱時間の記録マニュアル】のとおりである。

加熱調理食品の中心温度及び加熱時間の記録マニュアル
「揚げ物」、「焼き物及び蒸し物」、「煮物及び炒め物」における加熱温度・時間と記録の基本

①調理を開始した時間を記録する。
②調理の途中で適当な時間を見はからって食品の中心温度計で3点以上測定する、全ての点において、75℃以上に達していた場合には、中心温度を記録すると共にその時点から更に1分以上加熱を続ける(二枚貝等ノロウイルス汚染の恐れのある食品の場合は、85~90℃で90秒間以上)。なお、中心温度を測定できるような具材が無い場合には、調理釜の中心付近の温度を3点以上(煮物の場合は一点以上)測定する。
③最終的な加熱処理時間を記録する。

なお、複数回同一作業を繰り返す場合には、①~③で設定した条件に基づき、加熱処理を行う。この場合、中心温度の測定は、最も熱が通りにくいと考えられる場所の一点のみでもよい。

  

解説:
学校給食は原則として、「前日調理」は行わず、全てその日に調理する。(参考:学校の給食の調理基準えは前日調理を禁止している。)

その理由の多くは、前日調理し緩慢放冷状態で保管(寸胴容器保管)され、翌日使用することで食中毒(芽胞形成のウエルシュ菌食中毒)になる恐れがある。この機会を無くす又は回避するために規制している。





二次汚染の防止

(1)調理従事者等は次に定める場合は、「正しい手洗い」に従い、必ず流水・石鹸による手洗いにしっかり2回(その他の時は丁寧に1回)手指の洗浄及び消毒を行うこと。なお、使い捨て手袋を使用する場合にも、原則として次に定める場合は交換する。

手洗いのタイミング
①作業開始前及び用便後
②汚染作業区域から非汚染作業区域に移動する場合
③食品に直接触れる作業にあたる直前
④生の食肉類、魚介類、卵殻等微生物の汚染源となる恐れのある食品等に触れた後、他の食品や器具に触れる場合
⑤配膳の前

  

解説:
当マニュアルでは①~⑤の各タイミング時に石鹸による2回洗いを求めているが、調理現場の状況等を踏まえると難しい。従って、①の「作業開始前及び用便後」の場合は2回洗いを行うが、②から⑤は1回洗いでよいと考える。

正しい手洗い(手洗いマニュアル)
①水で手をぬらし石鹸を付ける。
②指、腕を洗う。特に、指の間、指先をよく洗う。(30秒程度)
③石鹸をよく洗い流す。(20秒程度)
④使い捨てペーパータオル等でふく。(タオル等の共用はしない)
⑤消毒用のアルコールをかけて手指によくすり込む。

なお、2回洗いとは、①~③までの手順を2回実施する。



(2)原材料は、食肉、魚介類、野菜類等、食材は分類ごとに区分して保管すること。解説 原材料の相互汚染を防ぐために、分類ごとに区分し保管(ゾーニング)する。


(3)包丁、まな板などの器具類、容器等は、用途別及び食品別に、それぞれ専用のものを用意する。

  

解説:
下処理には、魚介類用、肉類用、野菜用とする。調理用には、加熱調理済み食品用、生食野菜用、生食魚介類用とする。



(4)器具、容器等の洗浄・殺菌は、(別添2)標準作業書に中に示す「器具等の洗浄・殺菌マニュアル」に従う。

  

解説:
この標準作業書について、一部に疑問に思われる点があるので以下述べる。
「(別添2)標準作業書」について
「器具等の洗浄・殺菌マニュアル」の中には、①「調理機械」、②「調理台」、③「まな板、包丁、ヘラ等」、④「ふきん、タオル等」について、及び「原材料等の保管管理マニュアル」の中には①「野菜・果物」について、個々の洗浄・殺菌の方法が示されている。

疑問点は、これら各標準作業マニュアルの中には、飲用適の水又は流水で「3回水洗いする」ことが設定されている。この3回水洗いすることに疑義がある。

1)疑問点
①1回よりも3回水洗いすることで物理的に汚れは少なからず落ちるが、3回水洗いする手間と、水道代金や人件費等の経費を考えると3回も水洗いする必要性が見えてこない。 ②洗浄効果を考えると、界面活性剤の化学的な作用を活かし最初から洗剤液を含む水で洗浄を行うことの方が、洗浄効果は高く確実である。
③生鮮度が第一の生食用野菜の洗浄・殺菌では、3回も水洗いすると、物理的に野菜の細胞組織を傷め、野菜はいわゆるクタクタになり品質の低下を招くことになる。

2)解決策
汚れの程度に応じて1回程度水洗いすることも必要だが、必要以上に3回水洗いを繰り返すことは必要ではない。最初から洗剤液を含む水で洗浄を行うことで、洗剤が持つ界面活性剤の作用を活かし、無理なく効果的に洗浄できる。従って、標準作業書には、「飲用適の水(40℃程度の微温水が望ましい)で3回水洗いする」ことを求める必要はない。「汚れの程度に応じ、水洗いをする」に改めることで、十分である。



(5)器具、容器等は洗浄後に80℃5分間以上殺菌すること。原材料用に使用した器具、容器等については、そのまま調理後の食品用に使用することは決して行わないこと。

  

解説:
①使用器具の「使い回し」が原因で食中毒事故になることが多い。従って、一度使われる器具類は、必ず洗浄機に投入し洗浄殺菌したものを使う。調理器具等の使い回しは厳禁である。このことを職場ルールにすることが食中毒防止する手段として重要である。 ②多くの施設では、タワシ・スポンジは洗浄作業に使用されているが、洗浄・消毒が不十分で、取り扱いが悪いと細菌の巣になっている。従って、使用後は、中性洗剤でもみ洗いし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸け置き消毒を行なうなど、タワシ・スポンジの洗浄・消毒の徹底が望まれる。



(6)まな板、ザル、木製の器具は汚染が残存する可能性が高い。特に殺菌に留意すること。なお、木製の器具は極力使用を控えることが望ましい。


(7)シンクは、原則として用途別に相互汚染しないように設置すること。
特に、加熱調理用食材、非加熱調理用食材、器具の洗浄等に用いるシンクは必ず別に設置すること。また、二次汚染防止のため、シンクを洗浄・殺菌し、清潔に保つこと。

  

解説:
シンクの区域分け(ゾーニング)すること、また、そのシンクは使用後1日何回か定時的に、洗浄・殺菌することが重要であるが、その取り組むべき衛生意識がない施設が多い。要注意である。



(8)食品並びに移動性の器具及び容器の取り扱いは、床面から跳ね水等による汚染を防止するため、床面から60㎝以上の場所で行うこと。

ただし、跳ね水等からの直接汚染が防止できる食缶等で食品を取り扱う場合は30㎝以上の台にのせて行うこと。

  

解説:
床面は基本的に汚染区域であり、水に濡れている場合は、跳ね水は避けられず、食品を汚染させることとなる。従って、床面のドライ化が望まれる。



(9)使用水は飲用適の水を用いること。また、使用水は、色、濁り、臭い、異物のほか、貯水槽を設置している場合や井戸水等を殺菌・ろ過して使用する場合は、遊離残留塩素が0.1㎎/リットル以上であることを、始業前及び調理作業終了後に毎日検査し、記録すること。

  

解説:
水道水直結の水を使用している場合は、水質検査は必要ない。貯水槽設置のビル内店舗では、ビル管理者に、水質検査成績書の写しを頂き、その成績を確認し1年間保管すること。





原材料及び調理済食品の温度管理

(1)原材料は別添1に従い、戸棚、冷凍又は冷蔵設備に適切な温度で保存すること。また、原材料搬入時の時刻、室温及び冷凍又は冷蔵設備内温度を記録すること。

  

解説:
上記の記述を踏まえ、特に重要な調理施設内の「冷蔵庫の衛生管理」について、以下に解説する。

冷蔵庫の衛生管理
1)食品から溶出液(ドリップ)等に汚れた場合はそのつど清掃する。
2)1週間に1回以上洗浄・殺菌する。
3)庫内温度を庫外から確認できる温度計の設置し、庫内温度は毎日午前と午後に測定する。記録は1ケ月以上保存する。
4)食品の収納は庫内の70%以下にとどめ、冷気が十分に対流するように収納する。
5)食材は、魚、肉、野菜等に分類別に、及び加熱済みや殺菌済みの清潔食材は上段に、非加熱や未殺菌食材は下段に、区域分け(ゾーニング)し、交差汚染を避ける。また、庫内棚に直置きせず、殺菌処理可能なステン製等の蓋付容器に収納し保管すること。
6)先入れ先出しの励行、食材毎に、入庫日、開封日、加工日及び殺菌日等を表示する。

冷蔵庫内の洗浄・殺菌の方法
1)食品、庫内棚、露受け皿など全てを取り出す。
2)水を含むダスターで庫内の汚れを拭取る。
3)水に台所洗剤を入れた液を含むダスターで、庫内拭いた後、水拭きする。
4)次亜塩素酸ナトリウム(100~200ppm)溶液を含むダスターで、庫内を拭き殺菌する。
5)水を含むダスターで付着した次亜塩素酸ナトリウム溶液を拭取り、乾燥させる。
6)次亜塩素酸ナトリウム臭気が無いことを確認後に、食材を入庫する。
なお、庫内棚も上記同様に行う。



(2)調理後直ちに提供される食品以外の食品は、食中毒菌の増殖を抑制するために、10℃以下又は65℃以上で管理することが必要である。

  

解説:
1)細菌が増えるには、「栄養」「温度」「水分」の3要素が不可欠です。食品の多くは、栄養分と水分が含まれているので、「温度」をいかに管理するかがポイントである。
2)ほとんどの食中毒菌が増殖する至適温度帯は約20~50℃の範囲である。65℃以上はほとんどの菌は死滅する。従って、増殖を抑制するには、10℃以下又は65℃以上で管理する。



(3)加熱調理後、食品を冷却する場合には、食中毒菌の発育至適温度帯(約20℃~50℃)の時間を可能な限り短くするため、冷却器を用いるか、清潔な場所で衛生的な容器に小分けするなどして、30分以内に中心温度を20℃付近(又は60分以内に中心温度を10℃付近)まで下げるよう工夫すること。

  

解説:
給食施設等での調理食材の緩慢放冷が原因で食中毒を起こす事例が多い。 その多くは、調理食材の緩慢放冷による芽胞形成食中毒菌(ウエルシュ等)による食中毒である。対策は、30分以内に20℃付近又は60分以内に10℃付近を目安に、小分けして冷却又は急速冷却器(急速冷却器=ブラストチラー)を用い急速に冷却する。この冷却温度とその時間との関係は特に衛生管理の中で重要な管理点である。



(4)調理後の食品は、調理終了後から2時間以内に喫食することが望ましい。

  

解説:
「学校給食衛生管理基準」においても、調理後、2時間を経過すると細菌の増殖が活発になるため、2時間以内に喫食することとされている。 科学的根拠として、細菌の細菌増殖曲線における誘導期(細菌の増殖がない期間)の期間を踏まえて2時間以内に喫食することで、食中毒が防止できる。その旨を学校給食における食中毒防止Q&A(独立行政法人日本スポーツ振興センター)で説明されている。

意見: 大量調理施設衛生管理マニュアルでは、
「当衛生管理マニュアルでは、給食場等で調理された調理品は、調理終了後から2時間以内に喫食することが望ましい。」
と述べている。

弁当及びそうざいの衛生規範では、
「弁当は、本規範においてこれまで述べた事項を忠実に遵守する限り一般に、盛り付け後喫食までの時間が7時間以内の場合には食中毒の可能性は少なく、4時間以内の場合にはその可能性が殆どないと考えられるので、この点に留意しながら製造及び販売を行うこと。」
と述べている。

それぞれの抜粋に記載される「調理後の喫食時間」には差異がある。以下、その理由を考察する。

大量調理施設衛生管理マニュアルで造られる給食場の調理品の場合
1)当調理品は、殆どが調理後冷却せず、温かい状態で配食されること。従って、細菌の増殖による危険性が常に考えられる。
2)細菌が増殖するための、温度と時間の関係を表す「細菌増殖曲線」を踏まえ考えると、「誘導期」の2~3時間以内に喫食する場合は、細菌の増殖はなく食中毒を起こさない、という科学的な裏付けがあること。
3)当調理品は、数時間を超えて喫食することは考えていない。従って、PH調整剤又は日持ち向上剤など細菌の増殖を抑えるために食品添加物を使用する必要はない。

以上のことから、2時間以内の喫食が望ましい。

弁当及びそうざい衛生規範で造られる市販弁当の場合
1)一般に弁当(コンビニ弁当)は、20℃以下に温度管理され販売されている。従って、「細菌増殖至適温度」以下の状態で管理され、細菌の増殖は抑えられていること。
2)殆どの弁当は、細菌の増殖を化学的に抑えるため食品添加物であるPH調整剤や日持ち向上剤が使用されている。安全・安心を考え意図的に日持ちするように調製した弁当であること。

従って、20℃以下の保管温度やPH調製剤等の食品添加物を使用することで、盛り付け後の4時間あるいは7時間を超えても、食中毒の発生は無いと考えられること。
3)当規範では、「これまで述べた事項を遵守する限り」の前提条件を付けているが、それを満たすような衛生管理された施設は多くないと思われる。 また、提示した4時間以内、あるいは7時間以内の喫食では、「食中毒の可能性は少ない、また、ほとんど無い」と提言されても、万が一の事が有り、食中毒が心配で安心できず製造者は、添加物の効能効果を頼りに食品添加物を使用した弁当を製造しているのが現状と考えられる。 以上の事から、大手の弁当やそうざい業界において、当衛生規範で示すこれら提言は、形骸化されているものと思われる。 なお、当規範に該当するコンビニ弁当とは異なり、食品添加物を使用しない、注文により調理する弁当(例:仕出し弁当、ほかほか亭などの弁当)は、2時間以内に喫食する方式で販売することが望ましいと考える。





施設設備の構造

①食品の調理過程ごとに、各作業区域を明確に汚染度の度合いで、区域分け(ゾーニング)する。

●汚染作業区域 → 検収場、原材料の保管場所、下処理場
●非汚染作業区域 → 準清潔作業区域(調理場)と清潔作業区域(放冷・調製場、製品の保管場)

なお、各区域を固定し、それぞれを壁で区画する、床面を色別する、境界にテープを貼る等により明確に区画することが望ましい。

  

解説:
汚染作業区域から非汚染区域へ汚染が拡散しないよう各区域内で留めておく、ことが目的で区域分けされている。



②便所には、専用の手洗い設備、専用の履物が備えられていること。また、調理従業員専用のものが設けられていることが望ましい。

  

解説:
便所から糞便由来の病原体(ノロウイルス等)を厨房に持ち込まないために、専用の手洗い設備及び専用履物の交換(履物は消毒済み履物を1日2回程度入れ替える)が必要である。



③施設はドライシステム化を積極的に図ることが望ましい。

  

解説:
ドライタイプ床の利点
1)床からの跳ね水による二次汚染の防止ができる。
2)ウエットタイプの床では、濡れた床面は湿度が高く、細菌やカビの増殖が多くなる。ドライ化により細菌カビの増殖を防止できる。
3)長靴から短靴、重いゴム製のエプロンから軽い布製などのエプロンに変更でき、調理従事者の労働環境が改善される。





施設設備の管理

①施設・設備は必要に応じ補修を行い、施設の床面(排水溝を含む)、内壁のうち床から1mまでの部分及び手指の触れる場所は、1日1回以上、施設の天井及び内壁の床面から1m以上の部分は1月に1回以上清掃し、必要に応じて洗浄・消毒を行うこと。

②施設におけるネズミ、昆虫等の発生状況を1月に1回以上巡回点検するとともに、ネズミ、昆虫の駆除を半年に1回以上実施し、その実施記録を1年間保管すること。

  

解説:
食品衛生施行条例の衛生管理運営基準では、ネズミ、昆虫の駆除の実施記録は1年間保管することを義務化されている。

③施設は十分な換気を行ない、高温多湿を避けること。調理場は湿度80%以下、温度は25℃以下に保つことが望ましい。

  

解説:
厨房等は、この湿度と温度を標準にしてください。

④便所については、業務開始前、業務中及び業務終了後等定期的に清掃及び殺菌剤による消毒を行って衛生的にたもつこと。

  

解説:
ノロウイルス対策で、新規に追加された事項である。

⑤施設(客席等の飲食施設、ロビー等の共用施設を含む)において、利用者等がおう吐した場合には、殺菌剤を用いて迅速かつ適切におう吐物の処理を行うこと。利用者及び調理従事者へのノロウイルス感染及び施設の汚染防止に努めること。

  

解説:
ノロウイルス対策で、新規に追加された事項である。





検食の保存

検食は、原材料及び調理済み食品を食品ごとに50g程度ずつ清潔な容器(ビニール等)に入れ、密封し、-20℃以下で2週間以上保存すること。なお、原材料は、特に、洗浄・殺菌等を行わず、購入した状態で、調理済み食品は、配膳後の状態で、保存すること。

  

解説:
1)検食の目的は、万が一食中毒が発生した場合、その原因を速やかに究明する手段として、食品衛生施行条例の「衛生管理運営基準」で、弁当屋、仕出し屋、給食施設及び団体宿泊施設に義務付けられている。
2)「衛生管理運営基準」では、検食用食品及び原材料は、「食事提供後48時間以上、冷蔵保存する」こと、ただし、「日曜、休日をはさむ場合は72時間以上」とする、との規定である。
3)本マニュアルでは、「-20℃以下で2週間以上保存」すること、になっている。なお、保存方法も、前者は冷蔵保存、後者は冷凍保存となっており、異なっていることに要注意。
4)保健所は、食中毒事故が発生した場合その原因究明のために、患者の発症日、喫食日など遡り調査に費やす時間。加えて、病原菌が発症に至る潜伏期間の長い、腸管出血性大腸菌は7日前後、キャンピロバクターは5日前後であることなどを踏まえた潜伏時間などなどを考えると、検食は「2週間以上保存」されていないと原因究明に支障をきたす。 なお、病原菌等の死滅防止のために「-20℃保存」が望まれる。従って、「-20℃以下で2週間以上保存」が望ましい。





調理従事者等の衛生管理

①調理従事者等は、便所及び風呂等における衛生的な生活環境を確保すること。また、ノロウイルスの流行期には十分に加熱された食品を摂取する等により、感染防止に努め、徹底した手洗いの励行を行うなど、自らが施設や食品の汚染の原因とならないように措置するとともに、体調に留意し、健康な状態を保つように努めること。

  

解説:
近年のノロウイルス食中毒発生の原因は、調理従事者を介した食中毒が、多くを占めている。この現実を踏まえ、自らが原因とならないよう、注意喚起するよう戒めている。なお、参考までに、ある施設では、調理従事者には、二枚貝類及び肉類の生食を禁止しているところもある。

②調理従事者及び臨時職員を含め、定期的な健康診断及び月1回以上の検便を受けること。検便検査には、腸管出血性大腸菌(O157等)を含めること。また、必要に応じ10月から3月にはノロウイルスの検査を含めること。

  

解説:
ノロウイルス対策で、新たに追加された。従って、検便での検査項目は、「コレラ、赤痢、腸チフス、パラチフス、サルモネラ」+「腸管出血性大腸菌」+「ノロウイルス」が望ましい。

条例で規定している「衛生管理運営の基準」では、以下の1)、2)、3)の症状があるときは、医師の診断を受けさせると共に、その恐れが無くなるまでの期間、その従事者が食品に直接接触することのないよう、努めること、規定している。

1)従事者が飲食物を介して感染する恐れのある疾患にかかったとき。
2)その疾患の病原体を保有していることが判明したとき。
3)その疾病にかかつていることが疑われる症状を有しているとき。

「感染症法」の規定では、検便検査する「コレラ、赤痢、腸チフス、パラチフス、腸管出血性大腸菌」は三類感染症に該当する。その陽性者は、食品に直接触れる仕事等には就業しないよう「就業規制」される。

以上のとおり、検便検査で、これら病原体の陽性者は、条例規定の「衛生管理運営基準」及び感染症法の規定で、就業を規制されることとなる。

③調理従事者等は下痢、おう吐、発熱などの症状があった時、手指等に化膿創があった時は、調理作業には従事しないこと。

④下痢又はおう吐等の症状がある調理従事者等については、直ちに医療機関を受診し、感染性疾患の有無を確認すること。ノロウイルスを原因とする感染性疾患による症状と診断された調理従事者は、リアルタイムPCR等の高感度の検便検査において、ノロウイルスが保有していないことが確認されるまでの間、食品に直接触れる調理作業を控えるなど、適切な処置をとることが望ましいこと。

⑤便所には、調理作業時に着用する外衣、履物の交換等すること。(履物の交換が困難な場合には、履物の消毒を必ず行うこと)

⑥調理に従事しない者は、調理施設には立入り禁止であること。やむを得ず、調理施設に立入る場合は、外衣、帽子、履物を着用させ、手洗い、手指の消毒を行わせること。

  

解説:
部外者が調理施設に平服で入っている場面を多く見受けられる。彼らはどのような病原菌を持っているか不明であり、調理施設が汚染される恐れもあることに、要注意である。

⑦食中毒が発生した時の原因究明を確実に行うため、原則として、調理従事者等は、当該施設で調理された食品を喫食しないこと。ただし、原因究明に支障を来さないための措置を講じている場合は、この限りであない。(毎日の健康調査及び検便検査等)

  

解説: 調理従業員は同一施設で調理した食品、又はまかない食を食べると思われるが、万に一つ当該施設が提供した食事が原因で食中毒が発生した場合、その原因の源は、調理従業員の疾患に起因した二次汚染か、調理食材の汚染に起因したのか、見極める手段のためにである。





その他

①加熱調理食品にトッピングする非加熱調理食品は、直接喫食する非加熱調理食品と同様の衛生管理を行い、トッピングする時期は提供までの時間が極力短くなるようにすること。

  

解説:
トッピング用の非加熱調理食品の殺菌及び取り扱い等の衛生管理は適正か、また、トッピングする時期は適正か、問題意識を持ち常にチェックすることが、食中毒防止の上で重要である。

②廃棄物及びそれを収納する容器(ゴミ箱)への衛生管理と、容器の清掃への意識に、問題はないかである。

  

解説:
1)衛生管理運営基準では、廃棄物容器(ゴミ箱)は清潔にしておくことと、規定しているが、廃棄物容器の内外共に、汚れている施設を多く見受けられる。このことが衛生上問題なのである。
2)廃棄物容器は、誰もが触れる(外衣、手指等)機会があり、細菌汚染及び異物混入の発生源にもなる。
3)廃棄物容器の汚れは清潔感がなく、消費者の目線では、施設・店舗全体の衛生レベルを推し量る物差し(指標)にもなり、印象を悪くする。ゴミ箱の清掃を軽視してはならない。
4)調理従事者間においても、清掃及び衛生への意識・取り組みなど問題意識が希薄になると共に、廃棄物容器は汚いものなりと、まかり通る職場風土が醸成され、その結果、職場全体が不衛生な施設に陥る恐れがある。常に、ゴミ箱を綺麗に清掃された店舗は、清潔感があり、従業員の衛生意識を高める効果は大である。





III. 衛生管理体制

衛生管理体制の確立

①衛生管理責任者(以下責任者という)は、日頃から食材の納入業者について、情報の収集に努め、品質管理の確かな業者から食材を購入すること。また、継続的に購入する場合は、配送中の保存温度の徹底を指示するほか、納入業者が定期的に行う原材料の微生物検査等の結果の報告を求める。

  

解説:
微生物検査等の結果(成績書)の報告を求めることなどで、各食材について科学的に安全性を確認する。

②責任者は、衛生管理者に、別紙点検表に基づく点検作業を行わせると共に、その都度点検結果を報告させ、適切に点検が行われていることを確認すること。点検結果については1年間保管すること。

  

解説:
稼動中の点検(モリタニング)と記録と保存は、HACCPの基本的作業である。この作業が安全を保障する証明書になるのである。なお、点検結果の報告書を責任者が決済することが、第三者への報告書の信用を裏付けることとなる。

③責任者は、調理従事者等について、ノロウイルスにより発症した調理従事者等と一緒に感染の原因と考えられる食事を喫食するなど、同一の感染の機会があった可能性がある調理従業員等について、速やかに、リアルタイムPCR法等の高感度の検便検査を実施し、検査の結果、ノロウイルスを保有していないことが確認されるまでの間、調理に直接従事することを控えさえる等の手段を講じることが望ましいこと。

  

解説:
ノロウイルスにより発症した調理従事者等はもちろんのこと、同一の感染の機会があった可能性がある調理従業員等についても、検便検査で罹患の有無を速やかに確認する。その間調理従事を控えさすなど、その感染の広がり状態を確認することは、ノロウイルス対策では重要なことである。


<参考文献>
1)「大量調理施設衛生管理マニュアル」、厚労省、平成25年10月22日、食安発1022第10号 2)「弁当及びそうざい衛生規範について」厚労省、平成7年10月12日衛食第188号・衛乳第211号・衛化第119号 3)「自主衛生管理マニュアル」、日本べんとう工業協会、1995 4)伊藤武:食品と細菌汚染、食品中における病原細菌の動態、食品と微生物(日本食品微生物学会雑誌)、8:85-94.1991



追記
毎日使う、調理器具が汚れていると、それが原因で二次汚染につながります。従って、まな板の衛生確保は何にもまして重要です。私は、小型(調理に必要な面積を確保できる程度)で軽量の合成樹脂のまな板を10枚程度、用意することをお薦めします。

<理由1>
木製まな板では傷が付きやすく、細菌の病巣に成り易く、洗浄殺菌が難しいです。一方、合成樹脂のまな板は洗浄殺菌し易く、殺菌効果が高いため、衛生上安心して使用できます。

<理由2>
一枚のまな板では調理食品が変わるごとに洗浄殺菌する必要がありますので、現状では多くに厨房において、肉、魚、野菜ごとに専用野まな板を用意しています。しかし、洗浄殺菌済みの合成樹脂のまな板を10枚程度、用意する方が、より省力でかつ二次汚染を効果的に防止できます。その方法は以下の通りです。

<One-Way方式>
洗浄殺菌済みの合成樹脂のまな板を10枚程度、用意する。

使うたびに新しい洗浄済みのまな板に取り換えていく。そして、使ったまな板は洗浄シンクに貯めておく。

後でまとめて洗浄殺菌する。この流れを必要に応じて繰り返す。

下の写真で示したまな板をお薦めします。

京セラ カラーまな板


そして、下の写真で示した次亜塩素酸ナトリウム殺菌剤をお薦めします。

調理器具類の殺菌用:
【第2類医薬品】ピューラックス


食品(生食用野菜、鶏肉、魚介類)の殺菌用:
【食品添加物】ピューラックスS


(食品衛生コンサルタント:豊島重美)